持っている自尊心を曝け出したら、実はこんなにも痛い奴だったと気づくかもしれない。『キング・オブ・コメディ』

  カテゴリーはコメディ?それとも、ホラー?

 

あらすじ

コメディアンを目指すルパート・パプキンは、有名コメディアン、ジェリー・ラングフォードを熱狂的ファンの群れから救い出し、強引にコネをつける。「今度事務所に自演テープを持って来い」と言われて、有頂天。もうスターになった気になり、昔から好きだった黒人女性リタにも接近するが……。

キング・オブ・コメディ - Wikipedia

 

タクシードライバー」「レイジング・ブル」「グッドフェローズ」などなどで有名なマーティン・スコセッシ監督 × ロバート・デ・ニーロ

 

「キング・オブ・コメディ」も「タクシードライバー」同様、見た後に後味の悪~い感じが口いっぱいに広がる、クセのある内容になっておりました。 

 

 映画を見始めた当初は、売れないコメディアンを演じるデ・ニーロが、どんどん有名になっていくような、ありがちなサクセスストーリーだと思っていたんです。(まあ、ある意味サクセスストーリーでしたが。)

 

が、全く違いました。

 

この映画が教えてくれたこと

・自分自身を客観的に見えない恐ろしさ。本当は痛い奴だと気付かない。

・妄想と現実の違いが分からなくなっている恐ろしさ。

・罪を犯したのにも関わらず、一夜のヒーローとなって賞賛され、アメリカンドリームを成し遂げるエンディングに、アメリカ社会の皮肉。

ロバート・デ・ニーロの演技は凄い。

 

強烈に印象に残る映画です。

 

 

ダラダラと感想(ネタバレあり)

ルパート・パプキン(ロバート・デ・ニーロ)は、30代でコメディアンを目指ものの、実際は無職・実家暮らしのニート

彼自身はコメディアンで成功することを確信していますが、世間からは見向きもされていない現状を認めようとはしません。

そのくせ自尊心が強く、自分を否定されると、怒りを剥き出しにして相手を罵倒します。

 

自分は面白く人気のあるコメディアンなんだ。と、彼の妄想は次第にエスカレートしていき、遂には誘拐事件を起こしてしまうほど狂気的になっていきます。

 

 

・自分自身を客観的に見えない恐ろしさについて。

 

パプキンは妄想癖があります。私もしょっちゅう妄想します。ええ、そらもう。

パプキンのコメディアンへの憧れや、妄想も変なことではありません。

 

パプキンが陶酔するコメディアン、ジェリー・ラングフォード。ラングフォードのトーク番組セットを自宅に再現してしまうほど彼熱狂的なファンです。それくらいなら、ファンだから、許容範囲ではないでしょうか。

 

ラングフォードの秘書からもっと下積みが必要だと言われても、パプキンは自分はラングフォードと肩を並べてトークショーに出れるくらいの人物だと思いこんでいるので、聞く耳を持たず逆に炎上してしてしまう。

彼は、自分が間違っているなんて、一ミリも思っていないのです。

 

いやーでもこれ、正直、新卒の時の自分を思い出しました。できない事が分からないから、自信満々だったんですよ。華々しく散りましたけど、そんな自信なんて。

逆に先輩になって新卒くんの自信満々な態度を見てると、あーこんなんだったんやな自分もと思いますが。

 

 

・妄想と現実の違いが分からなくなっている恐ろしさ。

 

現実を受け入れられないパプキン。

自分が有名じゃないのは、有名になる機会がないからだと、勝手に思い込む。

何もかも自分の思い通りに事が運ぶ妄想の世界に逃げ込んでしまうパプキン。そしてそれを現実化させるために動き始めます。

結果的にテレビ局のラングフォードを誘拐し自分を彼の番組に出すように脅しますが、場合によっては殺人まで引き起こしそうなほど。

 

妄想がここまでくると事件です。

 

 

 

・罪を犯したにも関わらず、一夜のヒーローとなって賞賛され、アメリカンドリームを成し遂げるエンディングに、アメリカ社会の皮肉。

 

誘拐事件を起こし、一夜限りで番組に出演するパプキンですが、それから状況は一変し、一躍彼は人気者になります。

がこれをサクセスストーリーだ!と思う人はほとんどいないのではないでしょうか。

 

むしろ、罪を犯してしまったのにも関わらず、それを受け入れてしまうアメリカのショウビジネスを皮肉っているように、私には見えました。

 

実際にアメリカのアクターや歌手、アーティストはドラッグや、セクシュアルな画像、ゴシップが毎日のように溢れる世界です。私はそんなゴシップが好きですが。

 

才能があるから活躍できる、のは納得だけど、犯罪や中傷行為ってそんな簡単に許されて良いのか?と思うようなことも。

 

 

ロバート・デ・ニーロの演技は凄い。

 

演技を演技と思わせない。

パプキンは本当はとても優しく、少年のような純粋な心の持ち主です。

事件を起こしてもなお、何の悪気もなさそう終始笑顔を絶やしません。

やっと自分の夢が叶った!と言わんばかりです。

彼にとっては夢(妄想)がやっと現実になった。

そんな猛進する彼を自然に演じた ロバート・デ・ニーロはやはり凄いです。

コメディ・アクション・ヒューマン・ラブストーリー・ヒストリーなどなど、出演映画が多方面な彼は本当にカメレオンですね!

 

 

気になったフレーズ 

 

Better to be king for a night than schmuck for a lifetime.

 ドン底で終わるより、一夜でも喜劇王になりたかった。

 

※単語

〇schmuck (シュマック)

1 *1 (不愉快な)ばか,まぬけ,低能,うすのろ,変人

2*2 陰茎,ちんぽ.

by schmuckの意味 - goo辞書 英和和英

 

例:I feel like a schmuck. (自分が)馬鹿みたい

by schmuck: 女性と食事をした直後に女性が帰ってしまったときに感情 - 植山周志のぶっ飛ぶブログ

 

〇lifetime

1 (n) 生涯.

2 (adj) 生涯の,終生の.

by lifetimeの意味 - 英和辞典 Weblio辞書

例:He made a great fortune in his lifetime 彼は一代で巨万の富を得た。

 

※文法

better A than B (BよりAのほうがましだ。)

 

直訳:一夜の王になることは、一生まぬけでいるよりましだ。

 

 

 

 

 

 

 

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